【三月公演】作演出 有賀実知 終演挨拶

ミュージカルサークルEM2017年度三月公演『改暦元年いきあがけっ!』は、無事終演いたしました。
ご来場いただきました皆様、応援してくださった皆様、ありがとうございました。
今後ともミュージカルサークルEMの活動の応援の程、よろしくお願いいたします!


今回は作・演出の有賀実知より終演の挨拶をさせていただきます。

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2017年度三月公演「改暦元年 いきあがけっ!」をご観劇いただきました皆様、改めましてご来場いただき誠にありがとうございました。作・演出(テラー役も)を務めさせていただきました有賀実知です。おかげさまで、無事に全4ステージを駆け抜けることができました。
当日パンフレットでも触れさせていただきましたが本作品は「時が進んでいくことを恐れてたまるか、また次の舞台で足掻いていきたい」という勇気を持つために、と書きました。2年生の引退という、大きな節目を迎えるのがこの3月公演です。最後を飾る、先輩に見せる、後輩に受け継ぐ、受け継がれる、座組一同の様々な思いが込められた公演ですが、なによりも次の舞台へと足を進めるための物語が描きたいと思ったのです。なんせ私自身がこれからどう生きていけばいいのかまったく定まらず、右往左往している真っ最中なので。何かのためにあがく自信と勇気を持つのは怖いです。そんなときに、この物語を思い出していただきたいです。「自信というのは、できるかどうかじゃない。誰かの何かのためにあがいてみたいと、そう思った自分の期待に持つものなのだ。」と。
今回もまた執筆と曲作りが難航し、初めての演出、役者との兼任、スタッフさんとのやりとり、抱える仕事は山積みで、ずいぶん苦しみました。先輩方が座組にいないことも痛感し、及第点は取れても満点は取れない、なにかどこか超えられない壁が最後までありました。しかし、本番直前までみんなで足掻き続けてきたかいあり、本番には今の自分たちにできる最大限のものをお見せできたのではないかと思います。2年間続けた分だけ、そこには確かに、その積み重ねが輝いていました。脚本や演技を支えてくれた稽古場の皆、演出を支えてくれた音照美や衣装、振り付け、歌唱指導のスタッフさん、舞台をお客さんとつないでくれた制作・宣伝美術・動画セクションさん、座組を円滑に回し、よき相談相手になってくれた舞台監督さん、演出助手さん。皆がいたからなんとかやってこれた公演です。本当によい仲間に恵まれました。
少しだけ、物語の中身に触れたいと思います。この物語は私の大好きな立川志の輔師匠という落語家さんの創作落語「質屋暦」から着想を得てつくりました。明治に実際に起きた太陰太陽暦から太陽暦への改暦で庶民は大騒ぎの中、因業な質屋(伊勢屋)をぎゃふんと言わせるために、大工の熊さんと女房のお満っつぁんが無い頭で知恵を絞るお噺。実際に聴いていただければわかるのですが、改暦により明治5123日以降が無くなってしまったことを巧みに使い、最後は欲が出た熊さんが気のいい質屋の大黒屋さんに一杯食わされるところがとても面白いお話です。庶民の暮らしも垣間見えて、笑かすだけが芸じゃない落語の面白みが詰まっている、私が大好きなお話のひとつ。このお話を近未来で、さらに人や時間を質にとってできないかというのが今回の物語の出発点です。落語というのは庶民に寄り添い続けてきた文化ですから、社会へのうっ憤とか、生きづらさみたいなものとの親和性が高いとも感じていました。台詞の中には「初天神」や「芝浜」など他にも様々な落語の要素が詰まっています。また、「業の肯定」とも言われる落語的な精神やちょっとした所作、寄席の形式、音曲、口調なんかも込めたつもりです。困った時はいつも大好きな落語に助けてもらいました(落語調の台詞をすらすらっと歌うようにつぶやくのも気持ちが良いものです)。きっと「あ、聴いたことのあるフレーズだ」「この部分を使ったのか」と楽しめると思いますのでぜひ、これを機に落語も聴いてみていただければなと思います。
話しだせばキリがありませんが、それはまたどこかで。
長々と失礼致しました。最後になりましたが、支えてくださった先輩方、家族・友人の皆さま、本当にお世話になりました。そして、ご来場いただきました皆様、温かく見守ってくださったすべての皆様に感謝申し上げます。ミュージカルサークルEMの活動はこれからも続いてまいりますので、どうぞご支援、ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

2017313